2020-10

空気入れ

空気入れを担いで駐輪場へ回り、管理会社のワゴンが留まっている。今日は自転車に乗れない、河原に行ってはいけない。そういうしるしだ。今は秋晴れだけれど、きっと台風が向かっているんだ。 管理会社のワゴンが発車する。運転手は見た顔だ。諦めろ、...

無題

この店も仕舞われる。スバゲッティは先送りされた。くるくるとまとわりつく。窓は飛沫で曇っているし、皆、つかれた、つかれた、と息を接ぐ。

資料室

資料室は閉じられた。連絡は明日にして。明日にはわたしの次の人が話すから。話をつけておいて。わたしのはんこは置いていくから。 一切が片づいても寄りつかないで。勉強をする必要がある。おのおの、わたしもあなたも別の人も。別の建物で。別の机で...

続きはない。

テープ起こしにとりかかる。幽霊のおしゃべりが被さって演説は聞き取りにくい。戦争がしたいのか、したくないのか、はっきりしなくてむず痒い。バグの散歩を頼まれている。六時までには出なくちゃいけない。かれの機嫌が気にかかる。光/低い軌道。次の日とい...

生まれかわり

続きはあとで。金柑が成っている。捥いで齧ろう。半年も眠れる。目覚めたころには、流行り病はあとかたもなく。そうしたら書類の残りを仕上げよう。戸籍の係りは何時まで? 特別な縁を結び直す。今度の名まえは自分で決めよう。花の名まえは勘弁。母の欄は空...

ネバーランドへ

海老とアサリと長芋を煮込み、磯臭い食事が出来上がる。億劫な生活で、明日には力尽きる。夢を見るのに馬力が必要だ。毛布に潜り込んで、木綿地のトンネルの奥に島が浮かんでいる。泳いでいくことを想像する。学齢に達する以前は、ときには上手にいったものだ...

貧しい人々

水を売っては日銭を稼ぐ。昼休みの勤め人が列をなす。半数は裸足だ。裸足は日に日に増えている。水は淀川から汲む。シジミが沈んでいる。ラベルは南アルプス、天然水。とはいえ誰も騙されてはいない。不味くはない。腹は下すだろうけれど。私は決して飲まない...

参拝

茶臼山から四天王寺までの道のりでいつも汗をかく。道の両側で仏壇が売っている。極楽ごくらく。わたしはただ亀を見に行くのだ。 甲羅干しは楽しいかい? 今はどこの水も淀んでいるが、気づいちゃいないだろうね。僥倖ぎょうこう。どうせ万年経たずに...

食堂

給水器からたくさんの氷と申し訳ばかりの水。 たらふく食べなさい、と母が耳のうしろで言う。 胃が小さくなったんだ、と言い訳をする。 そんなに食べなくたって、生きていけるよ。 そんなこと言わないで、ひもじいのは悲しいよ、昔の給食は不味か...

週末の予定

金曜日には博愛をする。 そうして週末を聖人として過ごす。 壊れたエアコンの口から亀が顔を出す。 黄銅色の甲虫が蛍光灯の傘の下を飛び回る。 わたしの身振りひとつで無限に殖え、嘯けばたちまち身を隠す。 あらゆる音楽を締め出して踊ろうと...
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