2021-12

正夢

襖が裂け 転げ出したした黒猫は 二つの部屋を抜け 唐辛子を炒った匂いの 台所の窓辺に 主のように掛け 足を組んで 爪を打ちつけ 白い飯を要求する 黒猫を伴侶にするのは 念願であるので この僥倖に 手踊りをして ...

思い出

菓子箱の蓋を裏返すと 昨日の生姜湯が 今や湖をなして 指を差し入れると昨日に帰る 月日は前に進まないこともある それが肌を温めることもある

90年代の呪い

探照灯の光線で濡れた 日暮れから随分遠い夜 公園を北西から北東に横切って 駅のある高架の方へ抜ける 歩きにくいスカート わたしにはまるで関係のない 表象で苦悩してみせる音楽 光を当て過ぎた 一方、わたしは泥に馴染み過ぎた

厄払い

左肩のお地蔵様に お隣さんが挨拶する 私は会釈を返したものか 迷った挙句 ぎこちなく お地蔵様が重くなる 明日の朝までこれが続く 火の用心の拍子木に 灰を飛ばして厄介ごとを 向こう三年追い払う

サムライの子孫

サムライの子孫が 押し入れの上の段に 握り飯を貯め込んで 朝ごとにすすり泣く 憂鬱が増すので 窓を全部開けて 私の白くて丸い魂を取り出して 放ってみせる  ほら、山へ帰っていく  私の場合六甲山だ  こういうもの...

ひとり遊び

遊び方を知らない 子供だったから 今になって遊ぶ ただ座り 月のくぼみの いびつなかたちを 砂に引っ掻く そういう遊びしか 未だ知らない

風邪っぴき

生姜のお茶を飲んでおきたかった 曇り空だし 眠りは長いし 夢は平凡 次に床を離れるときに わたしに舌があるのかどうだか

床に臥し

風邪っぴきの昼間 目の冴えた夜に 地獄の蓋で拍子を打つ 祝うて三度 三度で二階の猫が転げる

今年の予定

プログラムを書き替えたから これからは皆で踊れるはず チャルメラを吹く猿の人が 大陸の向こう端から渡ってきて 秋の初めにあそこの駅に到着し 奏でるだけでなく ステップの見本も 難なく披露する すぐに皆踊れるはず 猿の人は喜び...

ピアス

耳たぶに雷が落ちて 私の部品がやっと揃った これからはやましいことはなく 駆けても草臥れず 川向うの音を聞き分け 正しい信号を返せるだろう
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