2022-02

東京

自転車の車輪が歪んで漕ぐたびにきりきり音が鳴る 繁華街へ出るには線路を越えなければ 電車はもう一週間も通らない 二度と東京へ行くことはできないのだと思う 繁華街で化粧道具とアルミの物干しを買う そういうことをする必要がある 多分...

コーヒーを選ぶ

苦くないコーヒーを飲むのだっていい それくらいのことはいつでも変えられるし 泡のつくる象徴に未来を読むには たかだか百年程度 生きたことなど自慢にもならない

構造

ガス管を埋めている 壁一枚の隣接で 地下の友人たちの苦難を思う 要は構造の問題なのだ

悪口

複雑怪奇な理屈をこねて その実人を虐め殺すのが楽しみの 若く賢しげな顔をした そこいらの葦原の すすけた穂先の 河が涸れてもすすけて立っている その呆れ果てた性根に どんな悪口を投げてやればよいものか

葬式

髪を頭の後ろで縛ってこれで皆満足するはずだと 安心して棺桶にも入れるし花は悉く枯れる 死んで灰になって宇宙に撒かれることを望むとは 贅沢にもほどがあると地の底から文句が出るが どうせ大した先祖ではない、せいぜいが祖父の祖父程度 わ...

油の川

油の川の向こうがわに 四十年も隔てられた 幼友達の影がときどき スモークを貼った窓越しに 見え隠れするようで かれは水風船みたいに肥えて わたしはずいぶん細ったけれども 合図を思い出せるように 夢の中で幼い時代をめぐり ...

ジュズダマの黒い実を 妻繰り手繰り 路地のどん詰まり 円く座った 地元のひとたちと 昵懇の仲に なろうとしたことも かつてはあったけれど 詰まるところ 数え方も知らないし 考えもなしに 数え終わったあとのことを 尋ね...

冬の庭にて

熱にやられた前栽が 月光の下でもまだしなびて 息を吹き返すのを 待っているのももどかしく けれども夏は今や まるで架空の生き物のよう

幸運

自転車の前輪に蛇の抜け殻が 長々と絡みついているが私の自慢 幸運が路面に点々としみを作るが 地を這う虫すら気づいていない 毛の長い黒犬に残りの幸運をすべてあげよう それを受けるのに相応しいのは 少なくとも人ではないのは確か

腹痛

眠りが何の解決にもならないこともある。 寝覚めてもまだ雨が降っているし、 頭が冴えてさえいれば、傘などなくとも、 それなりの暮らしができるものだが、 雨降りだから仕方がないなどと、言い訳をして、 窓を開けることすらせず、天気予報を...
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