2022-06

かれら

かれらの秘密の会合が 開かれる場所も 時間も おおよそ知っているが 知らないふりをしてやっているのだ 通りがかりの振りで 横目に見る 今夜は赤毛の丈の低い馬が 酒の肴として呼ばれている 誰も聞いたことのない新しい考えや...

新しい土

壁と排水溝と 白線と熱と水たまりと あらゆる隙間で 新しい土が作られている そして私たちは行きつくところを知らない 誰も それが重大事だと 考えたこともない

水滴

自転車が湿気ていて長々と宙に寝転び もう二日も街を出られずにいる 汗をかくから替えの皮膚が必要 明日までに、もう三四枚ほど 夏のあいだじゅうこの慣わしが続く

幻覚

最近はふとした暇に 半透明のピンポン玉みたいなやつが 目の前に湧いてきて 押し合いへし合い それでも商談の相手が いくらの値をつけたのか 聞き逃すわけにはいかないのだ

曖昧な悪夢

「どうか私の 罪の告白を 最後まで聞き終えて そのあと 速やかに死んでくれたら 助かるのだけれど」 とかなんとか ぬかしているが 誰に向かって言っているのか 死ぬまで知らないままで いる方が賢明なのだ

旗印

明け方に 気持ちの良い夢を見て 寝巻のまま 足首に糸を絡めて チョコレート色に焦げた空 太陽光パネルの屋根の上に 掲げられ 西の風を浴びる 髪の毛は東へ棚引く 木たるべき一日の 旗印として

十二歳

十二歳 仲間を売る相談をする 路地じゅうに響く大きな声で 警察を呼べ 警察に引渡せ 重罪人だ 植木鉢の砦が崩れ去り 木蔦の絡まる格子戸の向こう わたしたちの祖母が目を醒ます

蛇としての散歩

散歩に出ると 私は蛇に変わる 誰も私に道を作らない 雨上がりの隣人たちは 砂金を被ったように眩しい 雨樋の口から汽笛が漏れ出る 意地悪は意地悪のまま 誰も蛇に関心がない 葉末に絡まる水晶の数珠 思案気な顔は思案気なまま
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