2022-05

邪悪な煙

焼き鳥を燻す煙が 屋台の軒を離れ 新緑の 枝々に巣を掛け 炎天下 あらゆる人の 相互理解への努力を帳消しにする

絶縁

悪い風のせいで 電話線が切れた つながらない言葉しか 喋らなくなった それで母との縁も 遂に切れてしまったのだ

鳥が空からはみ出ている それで私のベランダに落ちてくる ぼたぼた、ぼたぼた とめどない愚痴と 冷めきった十年 ぼたぼた、ぼたぼた

嘘をつく人

どうも靴の底の 刳り貫き方が悪いようで 郵便受けを覗くだけで白髪が出るし 猫を撫でるだけで帯電する

昼飯どき

ピータンの浮いた粥を食べながら 向かいの駄菓子屋に 組紐みたいな竜が 波打ちながら降りてきて あんたに売れるものなんかないよ、と 追い返されていくのを見た

解決の糸ぐち

言葉が相互に通じたようだ ついこの間まで 紫の花が道に散っていて 誰もかれもが 霧の向こうの 二つに重なった山容にだけ 注意を向けていたというのに

商売繁盛

誰かが商売のために掘った川だ 岸辺に臭い泥が溜まっている えべっさんの熊手が隊列なして いかめしく下っていくが海の手前で しゅんとつづまって臭い泥になる

私の正気の最後のひと握り 雨と雨の間に差し入る東風に 黄色い砂と流れてゆくか 筋向かいにはいつの間にか家が建ち 軒下から新しい人たちが生え出し そわそわそわともどかしく踊る
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