あめをまてども

あめをまてども

あめをまてども 4

4.帰還  祖父の家の敷地には、囲いと言えるような囲いはない。門と言えるような門もない。ただ、なんとなく地面が茶色から好き放題伸びた草の緑に変わって、その草の葉の間に半ば埋もれている、車止めらしき出っ張り二つと、町内会が設置している防犯灯...
あめをまてども

あめをまてども 3

3.高山印  酔っ払いが派手派手しい音を立ててグラスを落とした。 「おお、久しぶりにやりおったぞ」  ほれ、行け、と店長が背中を小突く。たすくは素早く雑巾を腰に挟み、モップと塵とりを手に取って、カウンターの後ろの隙間を縫って客のところ...
あめをまてども

あめをまてども 2

2. 雨を待てども 待てども待てども雨は降らず、降る兆しも全く見えない。 そんな報道が毎日のようにテレビや新聞を賑わせている。  確かに、もう2か月近く雨音を聞いていない。異常な事態だ。そろそろダムの水位とかやばいことになってるん...
あめをまてども

あめをまてども 1

1. ネコ人間  たすくがネコ人間と出会ったのは、つい最近のことだったが、もしもその邂逅について語ろうとするのならば、7月21日(日曜日)の午後6時半に、葱氏(ねぎし)町の郵便ポストがある角で……、などと語り出すのは不釣り合いのように...
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