押し入れ

どうしてそこに 隠れているの そんなすきまに、砂漠みたいに そこに巣をつくるみたいに もう塵になるのに もうみんな帰るのに

通勤途中に見た光景

しましまの レインコートを着た魚 自転車に乗って坂道を滑る 雨を追いかけているのだ 黒雲は非情に去っていく 「どうせ、海にはもどれないのにさ」

失恋

ブドウの柄の 子供の毛布を 頭から被って 逃げていった ともだちとも よべない ともだち つれあいにも しそこねてしまった そうして二人とも 人生の三分の一を 無駄にしたのだ

無題

木の葉のほどの 遣りきれなさよ 夢のまま死に 死にも気づかず 頓着さえできず ただ ゆうぐれ 少しだけ 目が 良くなったようだぞ と 校舎の上の 惑星の かぼそい光を 指で押し潰し その次の日は もう来ない

さくら、さくら

花の上で釣り糸を垂れているのは耳のない男 去年まで国語の教師をしていた 美しい日本語で愛国を歌う わたしが花に見とれると ボンタンアメを雨のように降らす わたしは傘をさす ビニールにアメ色の染みがつく もう会いたくない、と告げ...
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