信仰

電信柱が消えてしまったら、幽霊たちはどこで休むのだろう。わたしだって死んだら、あんなふうにてっぺんで丸まって、どんなにか安らぐかと思うのに。

あしあとを残すのはちょっとした気遣いだ。気づかないふりをするのが生きている方の礼儀だ。大通りが無限に北に続く。天には昇らない。ただ遠くまで歩いていくのだ、かれらも。

うしろ姿が重なって濃い紫の煙が充ちる。見送るのではない。あとをついていくだけ。天には昇らない。忍び足で少しだけ近づくとき、喜びで胸が痛む。

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