2. 雨を待てども
待てども待てども雨は降らず、降る兆しも全く見えない。
そんな報道が毎日のようにテレビや新聞を賑わせている。
確かに、もう2か月近く雨音を聞いていない。異常な事態だ。そろそろダムの水位とかやばいことになってるんじゃないの? いや、ちゃんと計画的に水を採取しているから大丈夫らしいよ。誰もが挨拶代わりに話題にするが、深刻な様子はない。今のところ蛇口を捻れば水は出てくるし、出てくる以上、これがある日すっぱり止まってしまうということは想像しにくい。例え出なくなってしまったとしてもまさか死にはしないだろうというあまり根拠のない安心感もある。
この異常気象の原因は、いまだはっきりしない。ありとあらゆる説が日本中の気象学者及び気象予報士及びアマチュア気象マニアかによって唱えられていたが、どれもそれなりに説得力がある一方、これといった決め手に欠ける。おかしなことに、この間晴れの日ばかり続いているというわけではない。空の曇ることや、明らかに雨雲と見えるものが広がることもたびたびあるのだが、なぜか雨は一粒も落ちずに雲は去ってしまう。
ゆえに中には「雨が降らないのは偶然、雨雲の気まぐれが続いた結果に過ぎない」という主張すらあって、案外これが当たっているのかも知れない。
たすくは、この雨のない地方の雨のない街で生活している。市の広報からの節水の呼び掛けを気にしながらも、時々は蛇口を開いたまま食器を洗ったり、トイレを二度流ししたりということもする。自然のいたずらの前に、一般人ができることなど大してありはしない。そのうち天も機嫌を直してくれるだろう。でなければどこかの賢い人がしかるべく解決してくれるだろう。たすくはもっぱら自分の生活の抱えている問題の方に気を取られていた。
だが、ネコ人間に出会って、そうも言っていられなくなってしまった。

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