小説 懐かしき海 1 海は夕暮れに覆われ、その全体が湿っている。 潮が満ちはじめていて、朱の塊がのしかかってくる。 嘴状に張り出した磯が右手に影となって貼りついている。先端のぎざぎざの岩も、もうじき海中に没するだろう。 大気そのものが朱に染まっている... 2022.03.13 小説