昼飯どき

ピータンの浮いた粥を食べながら 向かいの駄菓子屋に 組紐みたいな竜が 波打ちながら降りてきて あんたに売れるものなんかないよ、と 追い返されていくのを見た

解決の糸ぐち

言葉が相互に通じたようだ ついこの間まで 紫の花が道に散っていて 誰もかれもが 霧の向こうの 二つに重なった山容にだけ 注意を向けていたというのに

商売繁盛

誰かが商売のために掘った川だ 岸辺に臭い泥が溜まっている えべっさんの熊手が隊列なして いかめしく下っていくが海の手前で しゅんとつづまって臭い泥になる

私の正気の最後のひと握り 雨と雨の間に差し入る東風に 黄色い砂と流れてゆくか 筋向かいにはいつの間にか家が建ち 軒下から新しい人たちが生え出し そわそわそわともどかしく踊る

言い争い

雨が止んだと思ったら 左へ折れる角の彼方から 言い争いが流れてきて すなわち窓を閉じ それでもわずか流れ込んできたので さっきから咳が止まらない

土地の秘密

舗装なり砂利なり土砂なりを 薄く剥げばそこには 一面に貼られた太鼓の皮が 常にどうどうと鳴っているのだ

叫び

雨の下、線の上を歩くと 寂しさに叫びたくなり 結局本当に叫んでしまう 叫び声が山に撥ね返って 隣り町の人がそれを雷と思う

通学路

学校がはけてトキワサンザシ 飢えることを空想するタチバナモドキ 例え我が家を追われたとても 私の赤い実、だいだいの実 胃袋で溶けて合わさり舌は痺れる トキワサンザシ、タチバナモドキ

遅れてもやらないよりはまし

マチカネワニの疎らな歯の 間に蹲る古い時代の青 私が二十年も前に 本当は見つけていなければならなかった こんがらがった青

個人的な英雄

背景からレモンの皮みたいに黄色い光が 肩から腕への骨のかたちを英雄的に見せている 彼女は実際英雄だ 今のところまだ洗面所から出たところだが 太陽の下に出ればたちまち そこの食堂からあちらの歯医者と その隣の公園くらいまでの範囲は...
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